HISTORY
2006年春にオープンしたルーラルカプリ農場。
もともとは乳牛の酪農家でした。明治43年創業で、私で4代目となります。
先祖は明治8年にはアメリカのカリフォルニア州に行きホルスタイン種という乳牛を導入したのです。
日本の酪農も良い時代もありましたが、ご存知のように今では経営が大変厳しくなってきています。
「なぜヤギなんですか?」とよく聞かれますが、理由はたくさんあるのです。
先ず山羊の乳の美味しさと乳質。
牛乳の飲めない方にもスルスルと飲めてしまう山羊ミルクは、人の母乳にもっとも近いためにどんな優れた牛乳よりも人の体には有効なのです。
牛の乳でブランド作りも考えたのですが、国内にいくつも立派に経営されている酪農家があり、自分がいったいどこで付加価値を付けたらよいのやら全くわかりませんでした。
手間隙かけた産物を、やたらと安く、というわけにはいきません。
「乳」というのは血液からできているのですから、沸いて出てくるものではないのです。
牛や山羊達は正に「命を削って」乳を出しているのです。
肉用の家畜の様にもいきません。
肉になるまで立っていられれば良いのではなく、健康で毎年仔を産み、毎日「乳」を生産するために、可能な限り自然に近い飼育をします。
マーケットでは常に競争があります。品質、価格やイメージ等々。
そういう事ではなく、独自のスタイルで喜んでもらえるものに取り組みたかったのです。
流通システムを避けて、創造的な方法を見出すために重点を置いたのは「ドゥ・イット・マイセルフ」倫理です。
山羊の乳の乳質と美味しさに出会った時に、「決断」することはとても簡単でした。
準備を始めていくといろいろと洒落にならない難題や苦労もありましたが・・。
まぁしかし「何事も動きながら考える」というスタイルでなんとかまだ生き残っています。
やっていくうちにたくさんの素敵な事に気付かされました。
山羊は美味しさと栄養だけでなく社会に役立つ動物でもありますが、生産者として食から繋がる素敵な人達との出会いがあるのは本当に素晴らしいものです。
慣れ合いやしがらみの繋がりではなく、本質で生きている人たち。
私達のようなビジネスは、そもそも大して儲かるようなものではなく、そうした人達と共にメッセージを伝え続けていきながら、自身の喜びを感じない限り、やり続ける魅力もないのです。
食育、健康、セラピー、福祉、環境、等々。
山羊ミルクは母乳に代る唯一の栄養源であり、山羊の人懐っこさは、多くの人の心を癒してくれます。
情操教育にも役立ち、幼稚園、保育園、小学校、地域の公園、耕作放棄地などで山羊を飼うことにより、素晴らしい効果が耳に入ることも私たちにとって本当に嬉しいことです。
でもそれだけでは不十分です。
日本のエネルギーや食糧事情、社会問題を考えると、私たちは改めなければならないことがたくさんあることに気付きます。
私達の常識は非常識なことが多々あり、グローバルかつ持続可能で有機的なライフスタイルを意識し、よりシンプルな生き方をしていかなければなりません。
我々に何が出来るのでしょう?
私達が努めているのは、
●自分たちが愛する山羊ミルク製品を適正価格で販売すること。
●自分たちがすることすべてを美しく、興味深く、親しみやすくすること。
●身も心も健康であるために情報、ライフスタイルを伝えていくこと。
●何事も世界標準で考えること。
●目的が数字や物、手段ではなく、心にある感情がこの上なく幸せであること。
●地域の食、音楽、アートと共に仕事をすることで、お互い高めあい継続できるようにし、仲間の努力には援助を惜しまないこと。
●小規模生産者や個人飲食店が、より心豊かな営業が出来る環境をどう作るか。
ルーラルカプリ農場は観光農場ではありません。
私たちは山羊を育て、乳を搾り、チーズやヨーグルトを作るただの農家ですが、思いがあり表現したいことや伝えたいことがあります。
ここを皆様に開放してゆったりと食事とワイン、カフェで過ごしてもらい、山羊たちと触れ合ってもらえることが本当に嬉しいのです。
ここを訪れる事で、何故かいつもより隣人に心を開き、優しい言葉をかけられる。
自分に人の行動を変える力があるなどとは思ってはいませんが「ここに来て何かの転機があった」。
そのような場になれるよう成長したい。
そして何より、皆様との出会いを大切にしていきたいと考えています。
小林 真人
ルーラルカプリ農場 代表
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●風土社 「チルチンびと広場」で2011年2月~2013年3月までに綴ったコラムです。
ぜひお読みください。
↓コチラから
Vol.20 本質をしっかり見つめて継続する DEC,2012
Vol.15 素の自分に自信を持つということ JUN,2012
Vol.10 ありのままの自分でいられるものを創りたい JAN,2012
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